映画『教皇選挙』に問われて
会う人ごとに、「あの映画は見ました?」「ここの意味はどういうこと?」と問われ、ついには友だちたちからの問い合わせに早く答えてほしいという、家族からの連日の苦情にまで及ぶに至り、ついに観ることになった『教皇選挙』(確かに仕事の一環)。ローマやバチカンの美しい情景描写と緊張感溢れる音楽、サスペンスさながらの脚本。「荒唐無稽」(現・枢機卿談)ではあると思いつつも、さまざまなテーマを面白くデフォルメして、よく描かれたエンターテイメントだと思いました。中世さながらの伝統的な価値観と、現代のDEIやジェンダー問題をどのように受け入れていくかの葛藤を前に、逡巡する教会の教役者たちの苦悩を人間臭く描き出そうとした内容です。同時に、現在の教会法上は有り得ない設定や、教皇名に秘められた意味には、歴史上少々難があることなども感じました。しかしながら奇しくも、本日のゲストである小林先生からお話を伺う性分化疾患やLGBTQ+における人権上の認識も、今後より深めていかなくてはならないことを示唆的に描き出している点で、縷々考えさせられる作品だとも感じました。いま、世界中で宗教を巡る(宗教を利用しようとする)問題が事態を一層深刻化させています。その中で、伝統と連続性を重視する教会の背景説明をする場合、改革の必要性とその遅さが俎上に上ることがしばしばです。その意味でも科学者による生物学的・医学的な解説をしっかりと学びたいと思います。