2003年4月アピール: LTナイトと使徒ペトロ

          EMC委員長 進藤重光
 リーダーの要件は何か。イエスのまなざしを追ってみると、意外に知られていない重要な事実に気がつく。彼の弟子たちの姿には、決してミスを犯したことのないような人並はずれた才能の持ち主ではなく、むしろ、強さよりは弱さが目につきそうな正直な人物像が浮かび上がってくる。
 弟子たちのリーダーであったペトロは、イエスの死後、当然ながら非常に尊敬されたに違いない。しかし聖書には、そのペトロが語らなければ決して表にでないような、普通では教団のリーダーとして、恥ずかしくて外に出せないような経緯が幾つも記載されている。常識的には、教団の公式記録係は幾度も削除を考えたに違いない。
 すなわち、たびたびイエスに馬鹿な質問をしたこと、いつまでもくだらない権力欲を持ち続けていたこと、そして何よりも、自分自身が神に誓ってイエスを知らないと、はっきりイエスを裏切ったことなどなど。彼にとってイエスを語ることは、自らを否定することでもあったはずだ。しかし、ペトロの素晴らしいリーダーシップは、後進の弟子たちのために証言し続けたというところに発揮された。自分の惨めな失敗談を繰り返し、繰り返し、後の教団の幹部が削除できないほど繰り返し話して聞かせたのである。私は、そのペトロの誠実さと正直さを思うとき、いつも目頭が熱くなる。
 いま、YMCAに必要なリーダーシップは、実はこんなところにこそあるのかもしれない。