江戸城ファミリーウォークに思う

高橋 章

 2004年11月23日の「江戸城を歩く(大名登城の道)」に私は今回初めて参加しました。11月20日にはリーダーのための下見も行い、同じコースをすでに歩いていました。そこで私が感じさせられたものは、江戸城の中の静けさと、江戸城を出た後の喧騒の中で動いている東京という近代都市の姿でした。近代的な丸の内の高層ビル群、道路には切れ目なく続く自動車の流れ、しかしその反対に、自分が立っていた江戸城の中は、紅葉した木、松の木、もみじの木などの木々が茂り、日本庭園の池の澄んだ水の美しさ、そこに泳ぐ鯉の堂々とした姿、小さな滝から落ちる水の音の優雅さ、歩いている私は自然の中に心が素直に溶け込んでいく自分を強く感じました。これは近代化する明治維新以前の日本人の心の姿であったのでしょう。武士道に代表される日本人の精神の生き方が正にそこにあったのです。江戸城に住んでいた侍達は正にそういう時代を生きたのでありましょう。
 チャーリー・チャップリンは『モダン・タイム』の中で機械の一部の部品である人間の姿がそこに現され、近代における人間疎外を表していました。S・ハンチントンの『文明の衝突』に代表される近代文明の衝突、近代工業革命以後に推進されてきた世界では地球の温暖化、そして自然環境破壊、地球の人口増加、南北問題、民族問題などの諸問題に今日の私達が直面しています。近代の発展の反省を私達は自然との共存の中に静けさの中で考え直す時を今や迎えていると思いました。