青少年に夢と希望を

中村鐵五郎

 “少年よ大志を抱け”、少年時代、教師より鼓舞されたなつかしい言葉である。それは又廃墟から復興をめざす戦後日本の少年らにふさわしい言葉であったと思う。
 先日、テレビのチャンネルを回していてふとある場面に目がとまった。「桜中学3年B組」の15歳の少年少女達である。「校内暴力」「無気力」「いじめ」「不登校」「学力低下」など15歳を取り巻く学校環境は厳しい。しかし、いつの時代も子どもらは、明日に向かって夢を抱く。子どもらは各々に夢を語っていた。明日の夢を語るのは若者の特権である。そして若者の夢を育み、励まし、実現させてやるのは大人の努めである。
 翻って今日の社会をみると“児童虐待”、子どもらを対象とする“性的犯罪”、そして“戦禍”や“自然災害”による子どもという弱者を取り巻く環境は痛ましい限りである。米国の子どもの「神様」への問い合わせを紹介した『かみさまへのてがみ』(サンリオ刊)からは、子どもの悲痛な叫びが伝わってくる。今、大人たちは、子どもらを理不尽な受難から守るために何をなすべきか。その答えは容易でない。
 わが国では、高度成長に伴い、一流大学から一流企業へという表面的エリートコースが確立され偏差値教育がはびこった。しかし、バブルの崩壊と戦後60年の社会の制度疲労により、今やエリートも必ずしも安定、安泰とした“定席”ではなくなった。ましてや、エリートコースをはずれた多くの若者にとっては“末席”を確保することすら難しい状況に至っている。「夢も希望もない」と嘆ずる若者は少なくない。若者の無気力や非行は、夢を持てないことに素因がある。努力すれば将来夢が実現するんだという思いがあれば困難を乗り越えて頑張れるものである。
 青少年に夢と希望を与えるために大人として何をなすべきか。重い課題ではあるが青少年に夢のない社会に未来はないことは明白である。YMCAは青少年の健全育成を使命とする。青少年に夢と希望を適えるアクティビティに力と智恵が求められている。出番である。