近頃思うこと

長澤 弘

 最近の世の中の潮流をみると構造改革、市場原理・競争原理一本槍のマスコミ論調ですが、私はこれはいかがなものかと思うのです。たしかに最近株価は上昇しており景気は回復しつつあるように見えます。しかしこれは構造改革と称するものを進めた結果なのでしょうか。そして日本の経済はよくなる一方でしょうか。私にはそうとばかり思えないのです。かって経済学を学んだ人間として、好況は不況の結果でありまた不況は好況の結果であることを知っております。平成3年から始まった日本の恐慌とも言うべき不況は14年もたてば少しはよくなることもあると思うのです。またたしかに株価は上がっておりますが雇用の状態や零細企業の経営状態など、経済の実態の方はよくなっているという実感が得られないというのが現実ではないでしょうか。
 構造改革は財政支出を削減し小さな政府を目指しております。その一方で弱者が切り捨てられ勝ち組だけが世の中を謳歌する社会を目指してもいるのです。もちろんどのような世の中を望むのか、たった一つの正義が存在するわけではありません。弱肉強食、自由な競争ですべてを決める社会がよいと思う人もいるでしょうし、しかし共生とマイルドな競争を望む人もいると思うのです。自由な競争で強いものが勝つという社会は合理的でありまた腐敗しにくいのである意味では理想的な社会かもしれませんが、真面目にこつこつとやるしか能の無い人が経済的に破綻したり、場合によっては自殺に追いやられるような社会をどう考えたらよいのでしょうか。経済成長よりは経済の安定、低失業率、所得格差の僅少化を望む考え方もあると思うのです。
 しかし問題は今回の選挙の結果をみると私のような感じ方をするのが少数派であることのようです。若い人、半失業の状態にある人たちが構造改革を支持し市場原理社会を望んでいるように見えます。これは現状に不満を持っている人がただ何らかの変革を望んでいるためと思われるのです。
 私にはNEETとか、フリーターとか呼ばれる人が市場原理を是とする構造改革でなんらか状況がよくなるとは思えません。むしろ正社員が契約社員に取って代わられるとか賃金がひきさげられるとか、低所得層にも増税が強化されるとかの状況が悪くなる動きが強まるでしょう。
 もちろん私は従来の日本的な社会のすべてがよいといっているわけではありません。今までの日本には政治家の汚職、官僚の跋扈、天下り、談合、都市住民の無視、選挙定数の不公平など改革すべき点は多々あります。しかし総じて日本的な社会の特徴とは終身雇用を例とする競争回避型の社会なのです。日本人の本性を無視しアメリカのような弱肉強食の競争型の社会にすることがそのまま善とは言えないのではないかと思います。