科学的な結婚カウンセリング方法‘プリペアー、エンリッチ’

杉本ノリ子

 キリスト教会の結婚式で以前から大切にされていることの一つに、挙式前の心の準備のためのカウンセリングがある。かつて、教会の結婚式受付をしていた私は、米国のキリスト教会では挙式前にカップルに対して、ミネソタ州立大学家族療法心理学者、オルソン博士により開発された‘プリペアー’というプログラムが使用されていることを知り、受付をしていた教会も取り入れた。
 プリペアーは3つの過程がある。1.質問への回答 2.回答の分析 3.分析結果のフィードバックである。プリペアーは生活の諸領域に渡る13カテゴリー125の質問で構成されている。まず、順不同の質問に、5段階で回答する。カップルは別々に回答するので互いに回答をその時は知ることが出来ない。(1)次に二人の回答はコンピューターを使って集計、分析される。それにより二人の関係が科学的な情報として提供される。(2)その分析結果に基づいてカウンセラーがフィードバックを行う。(3)フィードバックは二人の絆の強い部分や、これから育てていかなければならない分野を知り、コミュニケーション実習も行う。質問はテストでないので正誤を問うものではない。第三者であるカウンセラーと、二人の実情に関連した情報を基に、お互いがオープンに話し合うことにより、より充実した結婚の準備を行う。米国に追従し日本も離婚が増加してきた1998年8月、ニューズウィーク日本版にプリペアーが掲載され、その後、既婚者用プログラム‘エンリッチ’も含め、雑誌、新聞、TV等々で取り上げられることが増えてきた。当初の対象者は教会で挙式するカップルであったが、マスコミを通じてプリペアー、エンリッチ両プログラムが多くの一般の人々に知られ、必要とされていることを知った。予想外の出来事であった。

プリペアー 質問の13カテゴリー
現実的な期待 余暇の過ごし方 家族の協力
性格行動傾向 性的関係 家族凝集性
コミュニケーション 子供&子育て 家族適応性
葛藤の解決 家族・友人関係
家庭の経営管理 性役割の平等性

 言うまでもなく平和な社会の基盤は個々の健全な家庭の存在にかかっている。人々が家族になり家庭を築くその出発点が結婚である。カップルは披露宴のような物理的な事柄に莫大な費用、時間、心を費やす。それらの事をサポートする組織は沢山ある。しかし、今本当に必要なのは、出会いから始まる結婚生活を円滑に行えるよう心理的なサポートをする組織である。その組織は少ない。
 YMCAとワイズという形態と同じ次元で考えることはできないが、私はワイズの精神を学びながら健全で強固な家庭を築くためカップルの手伝いをこれからも続けたい。